【獣医師に聞く】冬の動物病院に寄せられる相談や症状は?
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直接的にせよ間接的にせよ、冬は寒さが原因となる病気が多くなります。
今回は冬に動物病院を訪れるきっかけとなる体調不良について、症状や対応策も含めてご説明します。
冬はどんな病気や症状の来院が多い?
犬の場合
犬のホルモンの病気に、甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能低下症があります。
ホルモンの病気が冬に発症しやすい、というわけではないのですが、これらの病気を患う犬は低体温症になりやすいので冬の過ごし方も工夫が必要です。甲状腺や副腎という臓器から作られるホルモンは糖の利用や熱産生に関わっており、これらのホルモンの分泌が少なくなってしまうことで低体温症になりやすくなってしまうのです。
特に副腎皮質機能亢進症はゆっくりと進行する上に、特徴的な分かりやすい症状があまり見られません。低体温症で意識を失った段階で初めて異変に気付き、飼い主が病院に駆け込んでくることも多いものです。
その他、人と同じように空気の乾燥などが原因で、冬には気管支炎など呼吸器の病気も発症しやすくなります。
また、冷えで循環が悪くなることなどから関節疾患の痛みなどが他の季節よりも多くみられることがあります。
猫の場合
冬は猫のおしっこトラブルが増える時期です。
猫の祖先はリビアヤマネコという砂漠地帯に住む野生動物が起源とされ、貴重な水を効率的に利用できるよう腎臓が発達しています。体からおしっことして排泄する水分を減らすことができるよう、おしっこを濃縮する能力が高いのです。
その分、腎臓に負担がかかりやすくなっており、慢性腎臓病などの腎臓トラブルが多いと言われています。
冬は気温が低くなるので猫の飲水量が減り、おしっこはさらに濃縮される傾向があります。そのため、おしっこに含まれるミネラルが結晶化してしまい、その結晶が大きくなると結石になることもあります。また、結晶の塊が尿道に詰まっておしっこが出ない尿閉(にょうへい)という病気も多くなります。
中にはトイレの場所が廊下など寒いところにあるために行くのを嫌がって排尿回数が減り、膀胱に尿がたまっている時間が長くなることから膀胱炎や尿石症になってしまうこともあります。
おしっこは体に有害な物質を排出するためのものでもあり、二日近くおしっこが出ないと命の危険があります。おしっこが出ていない様子がある際は早急に受診しましょう。
その他、猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)などの基礎疾患がある場合、寒冷ストレスによって普段は抑えられている症状がでてくることもあります。くしゃみや鼻汁、目脂などが見られる場合や、動きが悪いなどいつもと違った様子がある場合には、早めに受診をするようにしましょう。
こんな症状は注意!受診の目安は?
世の中には様々な病気がありますが、まずは「いつもと比べて様子が変だな?」「見た目がいつもと違うかも」と思ったらその段階で受診することをおすすめします。
犬や猫は基本的には食べることが好きなので食欲や元気がない時は要注意で、その段階で状態が悪くなっていたり進行したりしている可能性があります。
寒い冬を健康に過ごす対策のポイント
気管支炎など呼吸器系のトラブルを防ぐためには保湿も欠かせません。ペットの体の届かないところに加湿器を設置するのも良いですし、加湿器がない場合は飼い主の入浴後に蒸気が立ち込めている脱衣所で数分程度過ごしてもらうのもおすすめです。
暖房は室温が25度を超えない程度に設定してあげるとよいでしょう。ただ、暖房の効いた部屋とそうでない部屋を犬や猫が自由に行き来できる環境であれば、人間が暖かく快適に感じる温度まで上げてもいいでしょう。
おしっこトラブルが増える猫には飲水量を増やす工夫も必要です。猫は動くものが好きな子が多いので、循環する給水器を使うのもいいかもしれません。そのほか、水飲み場を増やしてあげたり、ぬるま湯を飲むのが好きな子のためにお水とは別にぬるま湯を与えたりする方法も考えられます。
それはNG!寒さ対策でやってはいけないこと
猫や小型犬の中にはコタツで暖をとる子も多いようですが、長時間の使用は避け、低温やけどにも注意しましょう。暑くなると出ていくものなのですが、熟睡していると気がつかない可能性もあり、低温やけどを起こしてしまうことが考えられます。
コタツの中に入り込んでいるときは時間に注意し、コタツ机の上に乗っている場合は厚めのタオルなどを敷いて熱い部分が直接ペットの皮膚に触れないようにしてあげるとよいでしょう。
まとめ
冬は寒さが直接的な原因になって起きる病気や間接的に起こってしまう病気など、ペットの体調不良を招くさまざまなリスクが考えられます。ペットに変わった様子がないか注意しつつ、工夫して寒い冬を乗り越えましょう。