知っておきたい、メス犬特有の「子宮蓄膿症」について
出典:PIXTA
犬の子宮蓄膿症ってどんな病気?
細菌感染によって子宮内に膿がたまってしまう病気です。犬では発情終了後から数カ月で起こりやすく、特に出産経験がない犬では歳をとるにつれて発症リスクが高くなります。若齢犬でも発症する可能性がありますが、報告では5歳以上に多いようです。発情後の黄体期はホルモンの状態により、子宮内が細菌に感染しやすい環境になっており、それが子宮蓄膿症の発症に関与しています。細菌から出る毒素が全身にまわり(敗血症)、様々な合併症を起こし命を失う可能性のある大変危険な病気です。
主な症状
・たくさんお水を飲んで、たくさんおしっこをする(多飲多尿)・元気がなくなる
・ご飯を食べなくなる
・嘔吐
・陰部から膿がでている
・重症になるとお腹が膨れてくる
などがありますが、特徴的な症状が少ないこと、また無症状なことも多く、病気に気づくことが遅くなってしまう傾向があります。
犬の子宮蓄膿症の診断
レントゲン、超音波検査による画像検査で子宮の状態を確認することで診断することができます。また、軽症に見えても血液生化学検査ではさまざまな合併症の危険性も明確になるので、全身状態を確認するには血液検査が必須です。治療と、予後について
犬の子宮蓄膿症を完全に治す治療法は、卵巣・子宮を摘出する外科手術になります。しかし、発見が遅くなってしまうことも多く、病気がわかった時には進行した状態が多いため、毒素がまわり全身の状態がよくないことも。そのため、手術前の検査(血液検査・超音波検査など)が非常に重要です。手術後は抗生剤や点滴による治療を行います。手術前の全身の状態(病気の重症度)によりますが、手術自体が成功したとしても全身にまわってしまった毒素は手術によって取り除けないため、手術後の十分な治療(入院治療)と経過観察が必要です。
無事に退院しても油断は禁物!
手術後の治療を十分受けておうちに帰ってきても、体調をよくみてあげましょう。ご飯を食はしっかり食べているか、お水を飲む量、排便・排尿をしっかりしているかなどをチェックして下さい。内服の抗生剤はお家に帰ってきても、毒素を取り除くため、しばらくの間処方されます。調子が良くなってくると、ついその内服をやめてしまいがちですが、それは非常に危険です。残っていた細菌が抗生剤に対して強くなってしまい、その抗生剤が効かなくなってしまうことも。そうなると、より強い抗生剤に頼ることになってしまうのですが、強い副作用に見舞われてしまうことも多いのです。
また、手術創口を舐めてしまう子は手術創の感染を防ぐために、エリザベスカラーが必要な場合があります。
獣医師からのアドバイス
子宮蓄膿症には避妊手術(卵巣子宮摘出手術)を受けることが予防になります。未避妊の場合には、日頃からの発情サイクルや、陰部から膿がでていないか、出血の程度はどの程度かなどをチェックする必要があります。発見が遅れてしまうと命に関わる大変な病気です。いつもと何かが違うな…という程度のことが実は病気発見の鍵だったということもありますので、ささいなことも獣医師に相談してみてください。